焔痕_Chapter3

以前来た時と変わらない、古びて汚れた外観の精神病院。
受付には、やはり40代ほどの女性が、つまらなさそうに座っていた。


レオンローズ「……ごきげんよう」
ジョシュア「……」


軽やかに声をかけるレオンローズと、彼女を護るように背後に立つジョシュアの姿を見て、女性は丸眼鏡の奥の瞳を瞬いた。


受付の女性「…………へぇ……。来たの、あんたたち」


意外だ、といわんばかりの声音に、ジョシュアが軽く会釈をする。


ジョシュア「……さあ、レオンローズ」
レオンローズ「……ええ」


ジョシュアに小さく頷くと、ふと、きょろりと辺りを見渡す。


レオンローズ「……母の、お見舞いに来たのだけど」
レオンローズ「……あの子は?」
受付の女性「……」


女性は、ききっ、とコウモリのような声で笑った。


受付の女性「さっき帰ったわ。運が良かった、とでも言えば良いかしら」
レオンローズ「えっ」


無意識に、安堵の溜息を吐くジョシュア。
それとは対象に、レオンローズはなぜか小さくむくれて。


レオンローズ「……そう」
レオンローズ「…………せっかく、覚悟してきたのに……!」
ジョシュア「……まあ、母上との時間はゆっくり取れるだろう。行こうか…」
レオンローズ「……ええ」


受付の女性「……もう来ないかと思ってたよ」


進もうとした二人の背中に、受付の女性が声をかける。


受付の女性「こんな薄汚いとこで、手酷い痛手を食らった、お嬢さんがね」
受付の女性「家族愛ってやつ?……それとも、何か良い顔しとかないといけない理由でもあんのかい?」
レオンローズ「………………」


歩みを止める二人。
ジョシュアが、肩ごしに振り返った。


ジョシュア「…彼女は何も伝えられなかった」
ジョシュア「…リベンジしに来たのさ。母親に、あの子に、自分自身に」


そう言うと、ジョシュアはレオンローズの背をぽんと叩く。
軽い衝撃で、2、3歩前につんのめり。
その後、レオンローズはしゃんと背を伸ばした。


レオンローズ「……それに、わざわざ良い顔なんてしなくても、私は十分美しいもの。……中身のない道徳で、飾る必要なんてないわ」
受付の女性「………………」


女性の、ききっ、という笑い声がもう一度上がった。


受付の女性「とんだお嬢さんだこと」
ジョシュア「…可愛いだろう?」
レオンローズ「ジョシュア!」


ぺちん、と高く音を立ててジョシュアの腕をはたくレオンローズ。
仲睦まじい様子の二人に、受付の女性は大げさに顔をしかめる。


受付の女性「のろけは他所でやってよ!」
ジョシュア「正直に喋りすぎたかな……それじゃ、失礼」
レオンローズ「もう……」


つん、と顔を背けるレオンローズの肩に、ジョシュアの大きな手が促すように置かれ。
連れ立って長い廊下を進み始める二人の背中を、受付の女性はじっと見つめる。
そして小さく、本当に微かな、息を吐いた。

二人分の足音が反響する廊下には、今日も数人が隅でうずくまっており。
怯えたようでいて、そのくせ見透かすかのような視線を向けていた。

とある、部屋の前を通過しようとして。
例の、頭頂部が禿げた男が、笑いながら勢いよく飛び出してくる。


ジョシュア「…やあ、また会ったな」


声をかけられたその男は、ジョシュアとレオンローズの眼前でぴたりと止まり。
まじまじと、黒目がちな瞳で眺めてくる。
そんな男をそっと部屋に戻したジョシュアは、その肩をぽんぽんと叩く。


ジョシュア「…次は新しい登場の仕方を期待してるよ。失礼」
レオンローズ「……またね、悪戯好きさん」


その様子に小さく笑いながら歩を進めるレオンローズ。
されるがままにおとなしく部屋へと戻った男は、ドアの隙間から物珍しそうに二人を見送って。


男「…………マイカじゃ、ないな、ぁ……」


酷く掠れた声でそう呟くのが、二人の耳に届いた。


ジョシュア「……」
レオンローズ「…………。あの人、待ってるのかしら……あの子を」
ジョシュア「……見舞いにはよく来ているようだしな。顔見知りになっても、おかしくはないだろうが…」
ジョシュア「…ああいうタイプに優しい娘だとは、とても思えない……っ、と、言いすぎた、か…」


男を一瞥した後、そう零したジョシュアを咎めるように見上げるも、レオンローズはくすっと小さく笑った。


レオンローズ「……正直が過ぎるのも、考えものね」
ジョシュア「……すまん」
レオンローズ「ふふっ。そうやって、諍いごとばかり呼び込んでしまうんでしょう。最も、……その正直さに惹かれてしまったのだけれど」
ジョシュア「…弁えてるつもりなんだが、ついな…まあ、そこが君に好かれているならそれでいいさ…」
レオンローズ「ええ、光栄に思って頂戴」


会話も途切れぬうちに、リリィの病室前までやってくる。
レオンローズはひとつ息を飲み込んで、今度は迷いなく、ドアを開いた。


ジョシュア「…っ」


躊躇なくドアを開けたレオンローズに、少々驚いて息を呑むジョシュア。


レオンローズ「……どうしたのかしら、ジョシュア?」
ジョシュア「…いや。君が平気ならいいんだ」
レオンローズ「勿論よ。この私だもの、……」
レオンローズ「……あなたも、いるしね」
ジョシュア「…ああ。よし…レオンローズ」

レオンローズ「…………」


静かに見据えた先にはやはり、ベッドに腰掛けて、テレビに虚ろな視線を縫い付けた女――――リリィが居た。
薄く開いた口の端からは涎が垂れ流されている。
仄暗い部屋の中を改めて見渡してみれば、思いの外、清潔に整頓されており。
身体に繋がれた数本の管も、絡まることなく、それぞれの役目を果たしていた。


ジョシュア「……」
レオンローズ「……お母様」


レオンローズの呼びかけにも、音が届いていないのかと思わせる程、全く応じない。


ジョシュア o0(……無責任に伝えて見ろとは言ったが、これでは…)

レオンローズ「…………お母様、……」


側へ歩み寄ると、一瞬躊躇った指を骨ばった肩に乗せて、そっと揺すってみる。
だがその身体は、揺すぶりに合わせて振動するだけで。


レオンローズ「…………」


視線を伏せると、そっと手を引いた。
そのまま、母の隣に腰掛けるレオンローズ。


ジョシュア「……あまり無理にはするなよ、レオンローズ」


そう言いつつ、ジョシュアも反応のない母親に視線を向ける。


レオンローズ「……ええ。……あんまり、うるさくしても……嫌でしょうし」

ジョシュア「……リリィ・ブランディック…」
ジョシュア「……レオンローズだ、あんたの置いていった娘だぞ…」
ジョシュア「……何か、思う所は……感じる事は無いのか…」


ジョシュアの穏やかな声にも、僅かに瞼を動かすことすらしない。
感情が抜けたままの青白い顔は、テレビから映る色とりどりの光を反射している。


ジョシュア「…まあ…そうだろうな…」
ジョシュア「……もう少し、居てみるか」
レオンローズ「……ええ。……」


探るように、ハンカチでそっと、リリィの口からこぼれる唾液を拭うレオンローズ。


レオンローズ「…………私、……こうなる前は何処にいた、とか……どんな生活をしていて、……側に、誰がいたの、とか。……全然、知らないのよ」
レオンローズ「……ちゃんと。話してくれないと、嫌よ。……お母様……」


穏やかにそう零すと、そっと立ち上がって窓辺に寄り。


レオンローズ「……窓、開けないのかしら。陽が入った方が気分が良いと思うのだけれど」
ジョシュア「そうだな…今日は降雨予定日でも無かった筈だ…」
ジョシュア「外の空気を取り入れてみるのもいいだろう…」
レオンローズ「ふふ、少し篭っているものね」


カーテンを引くと、まだ明るい日差しが部屋の様子をありありと浮かび上がらせる。
光の筋がリリィの老いた腕を、首筋を、頬を照らし。
――――そして、青緑の瞳に輝きが映ると同時に、大きくリリィの身体が跳ねて。

甲高い、断末魔のような、耳をつんざく悲鳴が上がった。


リリィ「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」


ジョシュア「っ!?これは……!!」
レオンローズ「きゃっ……!!」
ジョシュア「レオンローズ、ナースコールを……」


腕を、足を、見境なく辺りに叩きつけて、リリィは暴れ始めた。
自分の身すら省みず、傷つけながら叫び狂う姿は、さながら獣のようで。

その時、ジョシュアの横を小柄な少女が風のように通り抜けた。
少女はレオンローズの腕を掴むと、ジョシュアの胸へと叩きつけるかのように引いて。


マイカ「どいてて!!」
レオンローズ「ッ、あなた、危な……!」
ジョシュア「…っ、おい…!?」


リリィの枯れた体をベッドへと押し付けるマイカ。
悶え身を捩るリリィの爪で、マイカの頬の皮膚が一筋破られる。


マイカ「っ、カーテン、閉めてっ、今……!」
ジョシュア「よし…俺が」


窓際に駆け寄ったジョシュアがカーテンを引くと、部屋は再び薄暗さを取り戻した。
その間にも、ベッドはけたたましく軋んで悲鳴をあげている。

蹴り飛ばされたテレビのリモコンが、床に叩きつけられて乾いた音を立てた。

母の上に乗り上げてその頭をシーツに押し付けると、マイカは手にしていたアンプルを思い切りにリリィの腕へと刺す。

窓際に立ったまま、リリィとマイカの様子を見つめているジョシュア。
ドアに身を預けるようにして、事の顛末を、息を止めているレオンローズ。

針が刺さって数秒、リリィは痙攣と共に崩れ落ちた。
その震えも治まる頃には、静かな寝息を立てている。
それを見届けてから、マイカはやっと詰めていた息を吐き、憎々しげにジョシュアとレオンローズを交互に睨んだ。

マイカ「……余計なことしかできないの?」
レオンローズ「…………ご、めんなさい。……でも、どうして」
マイカ「……日差しが、嫌いみたいね。いっつも、こうなる」
ジョシュア「悪気はなかった…彼女は俺の提案に乗っただけだ。すまない」
レオンローズ「違うわ、私が……」
マイカ「悪気があったらとっくにあんたたち殺してるし、そういう庇い合いは要らない。他所でやって」


冷たく言い放ちながらも、マイカはリリィの体を改めてベッドに横にして。
暴れた際に打ったのだろう、内出血が浮かんだ細い腕に、何かの薬を塗りつけてやっている。


ジョシュア「……君は、マイカ…だったな」
マイカ「…………」


血の滲む頬のまま、視線を上げるマイカ。
彼女からレオンローズへと、ジョシュアは視線を向けて。


ジョシュア「…彼女は…レオンローズは、もう一度話をしに来た……君達の母上と」
ジョシュア「…俺の余計な世話で、こんな事になってしまったが……」


その言葉に不愉快げに眉を顰めると、レオンローズを睨みつけるマイカ。


マイカ「……まだ都合の良いこと言える元気があったの?この後に及んで?」
ジョシュア「…母上がそういう状態ならば、せめて君達は…言葉を交わす必要があるんじゃないかと、俺は思う」


マイカ「…………」


再度、ジョシュアに視線を戻し。


マイカ「……それ、何の必要?お互い分かり合うため、とか、寒いこと言わないでよね」
マイカ「そういう意味なら、あたしは聞きたくないし、話したくもない。出ていって」

ジョシュア「……君が聞く、聞かないは好きにしろ。だが、レオンローズにもここで言いたい事を吐き出す権利くらいはあるだろう?」
ジョシュア「……喋りすぎたか?…レオンローズ」
レオンローズ「……あなたにしてはね」


ジョシュアの腕に手を置いて、一瞬だけ視線を伏せ。
レオンローズは、マイカの、猫のような瞳を覗き込む。
しばし、その視線を受け止めていたマイカであったが、つと逸らすと足音高く、ドアへと向かう。


マイカ「好きにさせてもらうわ。……カーテンは今後一切開けないで。テレビはそのまま。下手なことしないでね」

レオンローズ「……待って!」


呼び止められた瞬間にマイカの背から噴き出したのは、ふつふつと煮える溶岩のような、それでいて冷たく尖る氷柱のような気配。
虎が獲物の喉元を狙い身を引き絞るその時の、殺意であった。
甘い色の双眸に炎を燃やしながら、ジョシュアとレオンローズを映して振り向く。


マイカ「……本当に殺されたい?」

ジョシュア「……」
レオンローズ「ジョシュア、……」


黙ったまま二人の間に入ろうとするジョシュアを呼び止めて、袖を引くレオンローズ。
小さく首を振って見せると、もう一度、マイカを正面から見つめる。


レオンローズ「…………いきなり、もう一人の娘だなんて言って、何にも知らない私が来て……今まできっと、あなたが……お母様の世話を、一身に受けてくれていたのよね」
レオンローズ「……良い気持ちは、勿論、しないと思うわ。ごめんなさい」

マイカ「………………」
ジョシュア「……」


呟き始めたレオンローズの傍で、ジョシュアは佇んだ。
その袖を握る指に、ふと力が篭る。


レオンローズ「…………でも。……私だって、好きで何も知らなかったわけじゃないわ。何にも言われずに、置いて行かれて、私は、…………」
レオンローズ「……私、お母様のこと、大好きだったもの……」

マイカ「…………何それ。過去形じゃない」

レオンローズ「だって、そう言うしかないじゃない!過去だもの、私は今のお母様のことなんか知らない!」
レオンローズ「日向ぼっこが好きだったお母様なのに、どうして、日差しが嫌いになってしまったの、とか、……聞きたいことは、たくさんある、のに」

レオンローズ「……だから、待ちたいの。聞きたいし、知りたいの!もう一度、好きになりたいの!」
レオンローズ「…………もう一度、家族に、なりたい。……」
レオンローズ「…………きっと、私と一緒の……お母様が好きな、あなたと、も」

マイカ「……ッ」


レオンローズがそう言い終わると同時に、氷の礫が、レオンローズの頬を裂いていった。
奇しくも、マイカに残る爪痕と同じ位置から、数滴、血が零れ落ちた。
レオンローズは微動だにせず、対照に、フォトンを纏うマイカの肩は小さく震えている。


ジョシュア「……」


ジョシュアの逞しい腕の筋肉が、めり、と張るのが、袖を掴むレオンローズにも伝わった。
それは怒りであるのか、あるいは大切な者が傷ついたことがさせる反射であったのかは、定かでない。

貫くように振りかざされたマイカの瞳は、――――何処か、泣き出しそうな色をしていた。


マイカ「そんなおめでたい頭、吹き飛んじゃえば良い!!死んできて!!」


吐き捨てるように叫ぶと、マイカは薄い身を翻し、部屋から走り去って行った。
二人の耳朶に届く足音が、遠く消えて行く。


レオンローズ「あ、……」


差し伸べようとした手も虚しく空を切り。
大きく息を吐き出したと同時に、レオンローズはずるずるとその場にへたり込んだ。


ジョシュア「ふ…」


ジョシュアもまた、一つ短くため息をついた。
強張った腕がすとんと落ちる。


ジョシュア「…追うか?」
ジョシュア「…まだ、伝え足りないのなら…」
レオンローズ「…………良いわ。あの……」


幾分か、和らいだ顔で笑い。


レオンローズ「……あなたに抱えられて追ったって、格好がつかないわ……」

ジョシュア「…そうか。……さあ、立てるか」
レオンローズ「……大丈夫よ。ちょっと……ちょっと待って……」
ジョシュア「…何なら、抱いていく」
レオンローズ「えっ!?やっ、だめ、だめよそんなの、だめ!」


ぱっと顔を赤くすると、あたふたと腕をいっぱいに振るレオンローズ。


ジョシュア「…そうか?なら止しておくが…遠慮するな」
レオンローズ「遠慮とかそういうのじゃないの!もう!…………」
レオンローズ「……は、っ……ずかし、ぃ、から、ダメよ」
ジョシュア「……そうか」

ジョシュア「…言いたいことは…言えたか?」
ジョシュア「俺は少し、急かしてしまったかとも思ったんだが……」
レオンローズ「…………ええ。……いえ、分からないわ。これから、もっと出てくるかも」
レオンローズ「……思い付いたら、また、言えば良い、わよね?」
ジョシュア「…ああ。いつでも、また来ればいい」
ジョシュア「どうやら、あの娘も聞く耳はあるようだからな…」
レオンローズ「もう、またそうやって……」


ころりと笑うと、レオンローズはやっと立ち上がり。


レオンローズ「……でも、ええ、良いわ。また……」
レオンローズ「……今度は、1人で来てみようかしら。折り合いが悪そうだわ、あの子とジョシュア」
ジョシュア「…そうかね」


とぼけるように頬を掻くジョシュアに、レオンローズはまた笑い。


レオンローズ「そうよ……ふふっ、私の事が愛しすぎて、つい牙を剥いてくるものから守りたくなるのは分かるけれど」
ジョシュア「……」


応えないまま、視線だけが逸らされる。


レオンローズ「………………」
レオンローズ「…………何か言うものよこういう時は!もう!帰るわよ!もう!!」
ジョシュア「…ああ。帰るか…」
レオンローズ「そうよ、もう、……」


ぺちぺちとジョシュアの腕を叩きながら促していたが、ふと、眠り続けるリリィの姿を見つめて。


レオンローズ「…………また来るわ。お母様」

ジョシュア「……お騒がせしました…ってか」
レオンローズ「ふふっ、本当に…………」


そしてレオンローズがドアを開けると、頭頂部が禿げた男が目の前に立っていた。


レオンローズ「ひゃっ?」
ジョシュア「…ん?…おい」


何も言わず男が差し出したのは、しわくちゃになった1枚の絆創膏。
――――であったが、レオンローズの顔を見るなり、慌てて寝間着のポケットからもう1枚取り出して添える。


男「……マイカに………………」

ジョシュア「ああ…なるほど。」
ジョシュア「……思ったよりもいい男だな」
レオンローズ「……」


柔らかく微笑むと、そっと絆創膏を受け取る。


レオンローズ「……ありがとう。渡しておくわね」
男「…………」


黄ばんだ歯をいっぱいに見せてニーッと笑うと、ふらりと歩き去りながら、男はぶちぶちと誰にともなく呟く。


男「遊んでくれるんだよぉ……マイカは…………毎日……痛いねぇフヒッ……」

ジョシュア「……なんだ。モテるんじゃないか」
レオンローズ「……あなたが思ってるよりも、優しいのかもしれないわよ


冗談めかして笑うと、絆創膏を1枚、頬に貼るレオンローズ。
その横で、ジョシュアは何かを察したかのように、心無く僅かに笑っていた。


ジョシュア「……どうかな、優しいっていうかは…」
レオンローズ「……えっ?何?」
ジョシュア「…いや。世の中には色んな趣味の奴が居るって事さ…」
レオンローズ「趣味?……色んな?」
ジョシュア「……俺みたいな、趣味のいい男ばかりじゃないって事さ」
レオンローズ「ええ?……私に惹かれてやまないのは、当然だと思うけれど。よく分からないわ……」
ジョシュア「……まあ、判らなくてもいい。…帰ろうか?」
レオンローズ「釈然としないわ……。……そうね、帰ったらゆっくり解説して頂戴」
ジョシュア「解説も何も……困ったな。ふぅ…」


そんな話をしながら貰った絆創膏をポーチに入れて、二人はリリィの病室を出ていった。
ドアを締めれば、幾分かの静寂が訪れる。
テレビの音だけが響くようになった部屋の中で、ひとつ、美しい色の瞳が瞬いた。

  • 最終更新:2016-07-07 16:24:51

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